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連盟広報

特別対談
太田謙司 日本歯科医師連盟会長
石破 茂 内閣総理大臣

国民皆歯科健診について

太田会長
本日は非常にご多忙のところ、お話をお伺いするお時間を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
まずは第103代内閣総理大臣にご就任、誠におめでとうございます。
これまでも政権与党からは、骨太の方針に歯科に関する文言を毎年掲載、また先の衆議院議員選挙での公約にも「国民皆歯科健診の推進」を明記していただき、歯科医療への並々ならぬご理解に対し心より感謝申し上げます。
健康寿命延伸に向け歯科医療の重要性が国民へさらに周知され、歯科健診や治療を通じて一人でも多くの国民が健康になっていただくことが重要で、政府にこのような方向性を打ち出していただき、我々もこの取り組みに弾みがつきました。
石破総理
お口の健康は全身の健康に非常に関連していることが最近いたるところで言われています。少子高齢社会において、政府としては少子化対策が最重要課題ですが、高齢者も今までのキャリアを活かしてできるだけ長く社会に貢献して頑張っていただきたい。そのためにも高齢者が一人でも多く健康を維持していただくことがとても重要と考えています。国民にとっても身近に気にかけることができるお口の健康を守ることによって、全身の健康が保てるならばよいことだと考えます。
太田会長
近年、いろいろな研究機関でお口の疾病、特に歯周病と、全身の様々な疾病との関連性がエビデンスに裏付けられています。最近メディアでも取り上げられるようになってきましたので、国民にもそれが浸透しつつあると思っています。そして、昨年も骨太の方針に「生涯を通じた歯科健診に向けた具体的な取組の推進」と入れていただきました。国民皆歯科健診の実現に向けて経済的かつ効率的に実施できる方法の一つとして、舌表面から検体を採取し、試薬を用いてその色の変化で歯周病リスクを判定するような検査など、いくつかのチェックキットが開発されています。
石破総理
広く国民の皆様に口腔のチェックを受ける機会を持っていただける環境の整備が重要ですね。
太田会長
本来は歯科医院に行って検査を受けた方が、歯周病やむし歯のリスクだけでなく、かみ合わせのチェック、その他のお口の疾患の早期発見につながり、疾病の有無等、高い精度が見込めるため実際そうするべきでしょう。しかし現状では歯科医院での健診はなかなか受診率が上がりません。そこでいろいろな工夫をしてできるだけ多くの国民に健診を受けていただき、歯科への関心を高めていただくよう国の政策に協力し頑張っていく所存です。
そして国民皆歯科健診は、国の事業として実証試験段階に入ってまいりました。これも政府与党の大きなご理解があるからこそで本当に感謝しております。

後継者問題について

太田会長
日本は少子高齢社会に突入していますが、歯科界も全国の歯科医師の平均年齢が令和4年の厚生労働省の発表では「53.2歳」、診療所の開設者では「59.1歳」で高齢化が進んでおります。
ここで問題なのが、高齢歯科医師が営む医療機関の事業承継です。いわゆる後継ぎがいないことにより閉院になっては、歯科診療を将来にわたってその地域で安定的に提供できないということです。令和2年の日本歯科総合研究機構が行った調査によると、事業承継についてのアンケートの結果、「不明」が36.0%、「予定なし」が52.5%でなんと約9割の歯科診療所の継続性が不安定な状態に陥っていることがわかっています。
石破総理
歯科医師の需給に関して一時は過剰と言われていましたが、このお話を聞くと将来の歯科医療提供体制はどうなるか不透明ですね。国民の口腔の健康を守る歯科診療所の将来については国としても考えなければならない問題です。
太田会長
現役の歯科医師世代がこれから高齢化でどんどんリタイアしていきます。それに代わって若い世代がうまく繋いでいくことが難しくなっている現状があります。これは若い世代が歯科医師として歯科医療に従事することに消極的になっていることも背景にあるのではないかと思います。大学の歯学部を卒業しても歯科医師国家試験の合格が、以前に比べてハードルが高くなっていることから、歯学部より他の学部を志望するように高校の進路指導でも言われていると聞いたことがあります。そしてついに昭和57年以降、医師・歯科医師・薬剤師の数は、この40年で初めて、歯科医師だけが2%減少に転じました。
石破総理
少子化の進む日本にあって、全国の大学入学者も減少するなかで、歯学部や歯科大学への入学を敬遠する流れになっては歯科医療提供体制の基盤が揺らいでしまう心配がありますね。それに歯科の専門性から、一人前の歯科医師になるには何年もかかるのではないですか。
太田会長
歯科医師を目指すために大学課程で6年、免許取得後の研修期間が1年、計7年間で歯科医師として社会に出て、治療ができるようになります。個人差がありますがそこからさらに数年は臨床経験を積んで、一人前になることが普通だと思います。
また現在は歯学部への入学者の約半数が女性ですが、女性の歯科診療所の開設者は全体の6.3%にとどまっていることも課題です。これに対し日本歯科医師会では、歯科医師会における女性の活動や男女共同参画の取り組みや、今後の支援に役立てることを目標に「令和6年度女性の政策・方針決定参画状況等に関する調査」を行いました。いわゆる「歯科医師不足」の課題に対してどう解決していくか。今後、我々歯科界も政府与党のご協力をいただき真剣に向き合わないといけないと思っております。
石破総理
国民の健康保持増進には歯科医療は無くてはならない医療であり、重要な課題と考えます。

歯科診療所の地域格差について

太田会長
先程申し上げたように歯科医師の高齢化が進み後継者不足も相まって、閉院する歯科診療所が全国でどんどん出てきており診療所の地域偏在も進んでいます。
この地域格差は、地方の人口減少との相関もあるようですが、新たに開業する歯科診療所は医療経済の中で都会に集中することにも要因があるようです。
ここで問題なのは「無歯科医地区」が令和4年度調査では増えていることです。現在784地区あり、その影響を受ける人口は188,647人となっています。社会インフラである歯科医療機関が減少、あるいは消滅することは、歯科医療の受診が困難な状況を作りだすことになり、それはあってはならないと思っております。
石破総理
私たちの政権では、「地方創生2.0」として、新たに「令和の日本列島改造」を進めます。「地方こそ成長の主役」として活性化と成長を実現させるため「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設しました。基本的な考え方としては以下を挙げています。
(1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生
(2)東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散
(3)付加価値創出型の新しい地方経済の創生
(4)デジタル・新技術の徹底活用
(5)「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上
このようにそれぞれが魅力を発信できるような地方になることが、様々な課題解決の手がかりにもなるのではないでしょうか。
歯科医療機関も重要な社会インフラの一つですから、地域の魅力を発信して、人が集まり、経済が回ることで歯科の先生も地方に目を向ける割合が増加するような社会にしたいです。
太田会長
政府の政策に大いに期待しております。
石破総理
私が先頭に立って、国・地方・国民が一丸となって地方創生の機運を高めてまいります。

左から、石破 内閣総理大臣、太田 日歯連盟会長、近藤晴彦 日歯連盟常任理事、樋口壽一郎 日歯連盟常任監事

歯科に対する評価について

太田会長
日本歯科医師連盟は、歯科診療の環境整備を行い口腔から国民の健康づくりに貢献しようという目的のもと政治活動をしています。近年まさに口腔の健康が全身の健康に多くの部分で関連性があり、国民の健康のために必要不可欠なものとなってきました。総理が先ほど仰った通り元気な高齢者を増やして、健康寿命を延ばし、生産性も高めていくことがこの国の将来には必須な課題だと思います。
厚生労働省の報告では、令和4年の65歳以上の要介護になった主な原因の上位3位は以下の通りです。
1位 認知症 → 歯周病菌が関連
2位 脳血管疾患(脳卒中)→ 歯周病菌が関連
3位 骨折・転倒 → 歯のかみ合わせの安定が関係
要介護になってしまう上位の原因のすべてに歯科疾患が関連しています。今後、我々歯科界が国の将来に果たす役割はとても重要なものになっていくと確信しています。そのためにも、比嘉奈津美顧問や山田宏顧問が窓口となって引き続き国政の場でともに活動し、一人でも多くの議員の先生方の応援と、歯科の重要性をご理解いただき、国民の健康のため日本の未来のために「歯科医療の重要性」の認識を高めていきたいと思っております。
石破総理
従来の歯が痛くなってから治療する、噛めなくなってから受診するという概念は変えていかなければなりませんね。もっと多くの国民に歯科の重要性が周知され歯科医療を通して健康になってもらえるよう、生涯を通じた歯科健診の実現に向け、引き続き取り組んでまいります。
太田会長
どうもありがとうございます。政府与党のご理解がなければ歯科界の発展はあり得ません。今後とも何卒よろしくお願いいたします。本日は貴重な機会を頂戴し重ねて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

対談を終えて

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